はじめに
ADHD(注意欠陥・多動性障害)を持つ人は、WAIS(ウェクスラー成人知能検査)を受けることで、自分の得意・苦手を客観的に理解できます。WAISは総合IQだけでなく、各指標(指標得点)を通じて詳細な認知能力を測定するため、ADHDの特性を知るのに非常に有効です。
本記事では、WAISの各指標が何を示すのか、ADHDの人に多いスコアの偏り、得意・苦手な分野とその活かし方について詳しく解説します。総合IQの数値にとらわれず、自分に合った生き方を選ぶための参考にしてください。
WAIS検査とは?
WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)は、知能を測定するための心理検査で、以下の4つの指標に分かれています。
- 言語理解(VCI): 言葉の理解力や知識の豊かさを測定する。
- 知覚推理(PRI): 目で見た情報を処理し、論理的に考える力を測定する。
- ワーキングメモリー(WMI): 短期間の記憶力や情報を操作する力を測定する。
- 処理速度(PSI): 情報を素早く処理し、作業を効率的にこなす能力を測定する。
この4つの指標の合計が「総合IQ(FSIQ)」として示されます。しかし、ADHDの人はこの4つのスコアに大きなばらつきがあることが多く、総合IQだけで能力を判断するのは適切ではありません。
ADHDの人に多いスコアの偏り
ADHDの人は以下のような傾向を持つことが多いとされています。
- ワーキングメモリー(WMI)が低い → 一時的な記憶が苦手、作業の順序を忘れやすい
- 処理速度(PSI)が低い → 細かい作業や単純作業のスピードが遅い
- 知覚推理(PRI)は高めの傾向 → 視覚情報をもとに考えるのが得意
- 言語理解(VCI)は個人差が大きい → 言語的な知識が得意な人と苦手な人が分かれる
このようなばらつきがあるため、総合IQだけでは適切な評価ができません。大切なのは、自分の得意なことと苦手なことを明確にし、それに適した仕事や生活環境を選ぶことです。
各指標が高い場合・低い場合の特性と生かし方
言語理解(VCI)
高い場合:
- 語彙が豊富で、文章を理解するのが得意
- 説明が上手く、人に教えることが向いている
- 分析力があり、理論的に考えることができる
低い場合:
- 言葉での説明が苦手、話すより書く方が得意
- 知識の吸収に時間がかかる
- 読解力が低いと感じることがある
活かし方:
- 高い人はライティングや教育、分析的な仕事に向く
- 低い人は図やイメージで考える習慣をつけると理解しやすくなる
知覚推理(PRI)
高い場合:
- 目で見て理解するのが得意
- パターン認識や問題解決能力が高い
- 空間認識能力が高く、デザインやエンジニアリングに向く
低い場合:
- 物事の関連性を見つけるのが苦手
- 複雑な構造を理解するのに時間がかかる
- 組み立てや図形を使った作業が苦手
活かし方:
- 高い人はデザイン、エンジニア、映像編集など視覚的な職業が向く
- 低い人は言語的な思考を活かした仕事を選ぶとよい
ワーキングメモリー(WMI)
高い場合:
- 同時に複数の情報を処理できる
- 計算や暗記が得意
- 頭の中で情報を整理しやすい
低い場合:
- 一度に多くのことを覚えられない
- マルチタスクが苦手
- 手順を忘れやすい
活かし方:
- 高い人は事務作業、データ処理、論理的な仕事が向く
- 低い人はメモを活用し、シンプルな作業環境を作ることが重要
処理速度(PSI)
高い場合:
- 作業が速く、単純作業が得意
- 試験など時間制限のあるタスクに強い
- タイピングや事務処理が速い
低い場合:
- 物事をこなすのに時間がかかる
- 作業効率が悪く、焦りやすい
- ミスが多くなりやすい
活かし方:
- 高い人は事務、プログラミング、工場のライン作業などに向く
- 低い人は時間に余裕のある仕事や、自分のペースでできる環境が重要
総合IQが低い=能力が低いわけではない
WAISの総合IQが低くても、得意な部分を活かせば十分に社会で活躍できます。ADHDの人は特定の能力に偏りがあることが多いため、弱点をカバーしつつ、自分の強みを最大限活かせる環境を見つけることが大切です。
- 得意な分野を伸ばす → 自分の強みを活かせる仕事を選ぶ
- 苦手な分野は工夫で補う → メモやツールを活用して対策する
- 自己理解を深める → 自分に合う働き方を探す
まとめ
WAIS検査を通じて、自分の得意・苦手を知ることで、ADHDの特性に合った生き方を選ぶことができます。総合IQの数値にとらわれず、自分の強みを活かしながら生き抜く方法を模索しましょう。適切な環境を整えることで、ADHDの人でも自分に合った生き方が可能になります。
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